attention

 

 

 

 

 

 

 

 

道無き道を往く、と言えば聞こえは良いが所詮山登り。

いくら近道といえどこうも時間がかった上、体力を消耗するのなら意味は無いと思う。

前を行く悟空の軽快な足取りに悟浄は少しばかり羨望を覚えた。

後ろを振り返ると微かに八戒が見えた。

山菜やら薬草などを物色しながら登っているに違いない。

その証拠に頭が左右に揺れている。

隣にはこの山登りを決定した男。

誰がどう見ても法衣姿の三蔵が一番歩きづらいだろう。

裾や袖に小枝、蔦、草などが絡まり眉間の皺は十倍増しだ。

と、その時案の定三蔵が躓いた。

咄嗟に手が出る自分の反射神経の良さが恨めしい。

悟浄は寸でのところで掴んだ三蔵の腕を取って引き上げた。

お礼は舌打ち一つ。

有り難くて涙が出そうだ。

嫌がらせ半分、掴んだ腕からずらし手を繋ぐ。

軽く抵抗されるが気にしない。

そのまま三蔵と手を繋ぎ悟浄はまた歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて誰かと手を繋いで歩いた事などあっただろうか。

肩や腰を抱く事はあっても手を繋いだ記憶は探っても出てこなかった。

あったのかも知れないが相手が誰であって何処でどんな時だったかまるで覚えてない。

記憶の引き出しを片っ端から開ける内、悟浄は思い出した。

雪の降る夜明けの事を。

あの時の三蔵の手は氷のように冷たかった。

今自分の手の中にあるものは決して冷たくは無かった。

あの日は雪、今日は山登りの最中。

当然といえば当然な事だが、それでも悟浄には何かが違うと思えた。

諦めたのか今は抵抗が止んだその手を離せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空が振り向くまで。

八戒が追い付くまで。

その短い間だけでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の枝を空いた手で払い前へ進む。

何かに足を取られた三蔵に繋いだ手を強く握られる。

これも反射神経か自分も強く握り返すのが分かった。

その瞬間脈打つ鼓動も伝わってくる。

背丈の高い草、折れた茎を踏みしめ前へ進む。

バキバキ、ガサガサと鳴る音より伝わってくる鼓動の方が大きく感じるのは気のせいか。

悟浄は前へと足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

ぶら下がった蔦と折れて引っ掛かっていた小枝を避けた悟浄の足の下は濡れた草の上だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だっせーーー!」

 

「うーん、『仲良きことは美しきかな』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめぇ!スッ転ぶ時は手ェ離しやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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