潜むが如く
半分俯せた背をなぞる指と唇は快感よりも睡魔を引き寄せた。
輪郭もぼやける程に光る月は既に高く昇っている。
どちらともなく一つベッドの上に二人で乗ってからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
一向に進む気配の無い悟浄の動きに三蔵はゆらゆらと漂う意識の中でふと思った。
背後の悟浄の体温が二人の間の空気を温め寒くは無い。
密着はせず触れているのは掌と唇。
皮膚の上から骨をなぞり後を追うように軽く唇が触れる。
意識が落ちる寸でのところで耳元で囁く声が聴こえた。
「ノリ気じゃ無ぇ?」
「・・・てめぇがな」
「あー・・・、何かこう・・・・・・・・・」
「『どうでもいい』」
「そう言っちゃ身も蓋も無ぇだろが。・・こう・・・どっちでもいい、ってカンジ?」
「大して変わんねえじゃねぇか」
悟浄が喉の奥で笑った。
背に置かれていた手が離れ足元に丸まっていた布団を引っ張り上げる。
結局今夜は大人しく寝る事にしたらしい。
無論三蔵にも異存は無かった。
二人で眠るには狭く、朝には壁側では無い悟浄が落ちているかもしくは気色悪い程寄り添っているかの可能性が大きい。
だがそれこそどうでもいいと思えた。
冷え込んでゆく部屋の中で触れてはいない傍らの体温が余りにも心地良い。
限り無く透明な夜だ。
こんな夜は全てを見透かされる気がする。
耳をそばだて目を凝らした夜に何もかも。
きっと静かに沈むように眠った方がいい。
傍らで身じろぎ一つ、小さく軋む音。
何とはなしに頬が緩んだ三蔵はその後沈むに任せた。
遠くで啼くふくろうの声が細くどこまでも響いた。