時過ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   悟浄、

   そちらはやはり暑いですか?

   それでも夜は冷えるんでしょうね。

   こちらは今、桜が咲いてます。

   

 

   昨日、三蔵と悟空のところへ行って来ました。

   お花見なんかどうかなぁと思って。

   お弁当作って行ったんですけど、余っちゃいました。

   つい癖で作りすぎちゃって。

   あれほど底無しだった悟空の胃袋は何処いったんでしょう?

   食欲だけじゃなく悟空は随分落ち着きが出てきて大人になった気がします。

   もともと子供って歳じゃなかったですけどね。

   昨日も殆ど食べずに煙草ばっかり吸ってる三蔵に、

 

   「煙草の吸い過ぎは身体に良くねぇよ。やめろとは言わねぇけど減らした方がいいぞ」

 

   って説教してました。

   三蔵、苦虫噛み潰したような顔はしても何にも言わないんですから。

   何か立場逆転って感じですよ。

 

 

   

 

   煙草って言えば、貴方愛用のジッポ三蔵に預けっぱなしにしてたでしょう?

   困ってないですか?

   三蔵の机の引出しに入ってますよ。

   こないだ三蔵のライターが無くなって探してたから、悟浄のジッポがあるじゃないですかって言ったら、

 

   「あれは俺のじゃねぇ」

 

   って言ってそこら中探し回ってました。

   引き出しに無造作に放り込んである感じなんですけどね、不思議と全然くすんでないんですよ。

   使ってもいないのにおかしいですよねぇ。

   まぁ僕ももういい大人なのでツッコミませんけど。

   

 

 

 

   ・・・その三蔵なんですが・・・・・

   偶に、本当に偶になんですけど。

   微笑うんですよ。

   それはそれは綺麗に。

   毒気の全く無い、自嘲でも嘲笑でも無い綺麗な笑みなんです。

   あの三蔵がですよ?

   例えば昨日なんかは満開の桜を観て微笑ってましたね。

   知らない人が見たらうっとりするような笑顔で。

 

 

   ・・・・・・・・でも、僕はあの笑顔を見ると哀しくなるんです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   あんなに綺麗なのに・・・・・

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

   きっと三蔵は何かを置いてきたんだと思います。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

   今も貴方が眠るあの吠登城の瓦礫の下に。

   貴方がいなければ必要の無いものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

   さて、僕はこれから屋根の修理をしなけりゃならないんですよ。

   明日あたり雨が降りそうで。

   全く、貴方がいないから力仕事まで僕がやらなきゃならなくて大変なんですよ?

   分かってます?

   次に逢う時には覚悟しておいて下さい。

   積もり積もった愚痴を夜を撤して聞いて貰いますからね。

   「勘弁してくれよ」なんて泣き言言ったって逃がしませんから。

   そのかわり、

   全部言い終わった後は貴方が本当に聞きたい事を話してあげます。

   ああ、でも本人の方が僕より先に貴方のところへ行っちゃいそうですね。

   やっぱり悟空の言う通り煙草は減らさせなきゃなりませんね。

 

 

 

 

   ・・・もう日が暮れかけてきちゃいました。

   空が綺麗です。

   今、こうして生きてこの空を眺められるのもあの時貴方が助けてくれたからなんですよね。

   僕はきちんと伝えてなかったような気がします。

   それはきっとあの意地っ張りな人も同じでしょ?

   伝えたい言葉は違っても、言えないまま・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

   今更思っても仕方無いことですね。

   それに貴方は分かってる気もしますし。

 

 

   さあ、本当に屋根の修理しなくちゃ。

   暗くならない内に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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