煙を吐き出すと少し揺らめいた後静かに空へと昇っていった。
旅のおかげで野宿にもすっかり慣れた。
好んでしたいとは思わないが暑くも寒くも無いこんな日は特に困りはしなかった。
走り去るジープを見えなくなっても尚見送った日を思い出す。
両手に八戒から受け取った荷物を抱えたまま立ち尽くす自分の姿。
余程奇妙に映ったのだろう、声を掛けられそのまま荷物運びの仕事を貰い次の街までの資金を稼いだ。
次の街でもまた次の街までの分と繰り返した。
仕事は何でも良かった。
肉体労働でも客商売でも僅か数日間であればさして苦にならない。
仕事が無いような小さな村では村人の畑仕事を手伝い食料などの現物を貰ったりもした。
大きな街で資金に余裕があれば昔と同じように賭博で稼いだ時もある。
八戒相手でなければそうそう負けはしない。
何をしてもそこそここなし、かと言って特に何か抜きん出ているものも無い。
こんな事を思い知る為に一人になった訳では無かった筈だった。
いつの間にかフィルター近くまで灰になった煙草を地面に押し付け悟浄は二本目を取り出した。
三人と別れてから幾つも季節は巡り長安はもうすぐそこに迫ってきていた。
八戒は卵みたいにポロポロ子供を産んでくれる相手を見付けただろうか。
悟空の背は少しは伸びただろうか。
三蔵は・・・
三蔵とはあのまま長安に皆と一緒に帰ったとしても旅に出る前と同じには戻れず、旅中と同じという訳にもいかなかった。
だからこそ一人になったのだ。
旅を終えてもそれでも居てもいいのだ、と自分自身で認めたかった。
たった一つでいい。
認められる何かが欲しかった。
生きていようが死んでしまおうが同じだった昔の自分が浮かぶ。
あの頃と何も変わっていないというのか。
何も持たずにただ彷徨っていたあの頃と何一つ変わっていないと。
くくっと悟浄の口から低い自嘲の嗤い声が洩れた。
咥えることもせず取り出したままで手の中にあった煙草を握り潰す。
そのまま仰向けにどさりと倒れた。
嗤い声は止まらなかった。
簡単な事だった。
探しても探しても見付かる筈が無い。
それはジープを見送った日も今もずっと自分の中に在る。
余りにも長いこと在りすぎて見逃していた。
嗤いが収まり目を開けると満月には程遠い月が空高く上がっていた。
小さく細い月だった。
その月が眩しくて悟浄は目を閉じた。
閉じても尚瞼の裏が光り両腕で覆った。
「・・・・・アンタの言う通り、やっぱオレには頭の運動が足りねぇわ・・・・・・・・・」
低く小さく呟かれたその言葉は薄闇へと吸い込まれていった。